ボレロ - 第三楽章 -
翌日、三日ぶりに出社した堂本に、これと言って変わったところはなかったが、午後
の会議のあと私の体があいた
のを見計らい、彼が近づいてきた。
折り入ってお話があるのですがと耳打ちされ、堂本の声に深刻なものを感じたた
め、いつでも応じる旨を伝えた。
「時間と場所は任せる」
「では明後日、会議のあと、お時間をいただけないでしょうか」
その日は午後から社外会議があり、系列会社が運営している施設に赴く予定で、
平岡の代わりに堂本が私に同行することになっていた。
「わかった」
「珠貴さんもご一緒願いたいのですが……明後日は、同じビル内にいらっしゃる
予定になっておりますので」
思いもしない申し出に緊張が走った。
何かある……
とっさにそう思ったが、危険を感じるより興味がまさっていた。
わかった、彼女には話をしておくと伝え明後日の約束を承知した。
友人たちへ、珠貴と一緒に堂本に会うこと伝えておいた。
用心のためであり、不測の事態が起ころうとも、彼らが知っていれば対応してくれる
だろうと思ったからだ。
互いの会議のあと待ち合わせ、久しぶりに連れ立って珠貴と出かけたが、私も
彼女も緊張に包まれていた。
先に約束の席に待っていた彼らの姿を目にして、私たちの緊張は一気に高まった。
そこには、堂本のほかに浅見君の姿もあった。