桜色の川と君の詩
金魚すくいをしたあと由希は僕の先を歩いた
「啓ちゃん、踊る?」
「ダメだよ、全然わからない…」
「由希だって恥ずかしいよ~、でも踊りたいな」
「じゃあ、後ろで見てやるよ」
僕は由希の手を引いて踊りの円に入った
由希は照れながらも踊る
結構上手い
二周くらいしたろうか…由希はふと、役員テントの前で足を止めた
「ちょっと待っててね…」
そう言うとテントの中に入っていった
昔聞いた曲が流れてる…
祭りの音頭は余り変わらないところがいい
「啓ちゃん!」
由希の声で振り向いた
「……!」
由希の後ろに着物を着た婦人がいる
僕はなんとなくわかった
(由希のお母さん?)
由希は少し深呼吸したあと言った
「啓ちゃん…、わたしのお母さんなの」
僕は彼女に目をやると、なんとか落ち着いて話した
「いつも由希さんを連れ出してすいません…渡辺です…」
「はじめまして。忙しい子で大変でしょう?」
しばらくお互いに自分の紹介が続いた
初めてのことで舞い上がっているのがわかった