蜜事は研究室で
“日下部 帝”という人は、その名前に違わず常にエラソーな人物である。

実は理事長の甥であり、その理事長たっての希望で、この高校に入学したらしい。

先ほど、かなり頭の悪い名前の自称発明品を自慢げに露呈してはいたが、もともとは中学卒業後アメリカの高学歴スクールに進もうと考えていたというのだから、一般ピープルからして見れば腹が立つことこのうえない。

……まあ、毎回全国模試でトップを独走していることを考えれば、学校の宣伝としては間違いなく有益な人物ともいえる。



「チッ……そうだこの『狩利 取留子さん』は、おっさんに頼んでネットオークションにでも出してもらうか。研究費用の足しにしよう」

「シツチョー……一応自分の通ってる学校の理事長捕まえといておっさんて……」



そして自らが依頼して引き入れたという負い目があるからか、この男に対する理事長の態度はかなり甘く。

校舎の隅っことはいえ、彼に“お願い”されるまま、誰にも邪魔されない『研究室』と称した空き部屋を、入学以来彼個人に与えているのだ。

……まあ、本人の話では“お願い”したと言っていたが、シツチョーの性格から考えるにそれは限りなく“脅迫”に近いものであったのではないかとわたしは見ている。
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