黄金(きん)の林檎
 しかも女の友人はよく見れば結構美人タイプだ。
 姉とは外見的には真逆なのに声が同じなんて不思議な感じがする。

「マイナーな作品なんで、面白いかどうか保障できませんけど一緒にいかがっすか?」

 俺の友人がそう答えた。

「決まりね!」

 女は喜び、俺達は一緒に映画を見ることになったのだ。
 誰だって男2人だけより、綺麗な女の人が一緒の方が嬉しいに決まっている。

 本当は一緒に行動するのはお断りしたかった。
 だが女の気分を損ね、姉に逆恨みされても困る。

 映画だけ観たら適当な理由をつけて帰ればいい。
 そう我慢することにした。

 女の友人の名前は棚橋 美紀。
 少し上品な感じの美人系だったのだが、やっぱり類は類を呼ぶのだろう。
 女がトイレに行って姿が見えなくなると、すばやく俺にメモを渡してきた。

 実は女にも同じ事をされていたのだ。
 何度目かの飲み会の時に。

「何かあったら連絡してね?」

 姉のサークルの先輩の友達に対し、何かって何があるんだろうか?
 ってマジに突っ込みしてやりたかったが、ただの常套句に面倒くさいだけなので微笑むだけにとどめた。

 けれど運命とは時に面白いもので、一週間後、美紀と偶然会ったのだ。
 向こうも1人でこっちも一人だったので、普通に挨拶を交わしたのだが、なぜ連絡してきてくれなかったのかとなじられた。

 姉と同じ声で色々言われ、結局携帯のアドレスだけ交換したのが間違えだったのだろう。
 それから連日のメール攻撃。
 
 少し付き合えば気が済むと言うので会ったのだが、驚いたことに会ってすぐラブホテルに誘われた。

 まあセックスに興味もあったし、欲求不満だったこともあり誘いに乗ったのだが、驚いたことに姉と同じ声で喘ぐ声の威力はすさまじく、自分でも驚くほど興奮した。
 そしてこれがきっかけで美紀と付き合うようになった。

 美紀は亜季って女と仲がいいと思っていたのだが本当はそうではなく、お互い嫌っているらしい。
 そではなぜ一緒にいるのかと言えば、相手より自分の方が上だと知らしめるチャンスを狙っていたと言うことだった。

 女が俺に対し執着しているようだったので俺を落としたかったらしい。

 美紀のことは何とも思っていないので落ちたわけじゃなかったが、亜季って女に見せびらかすのを協力したら好きな時に抱いていいという事で恋人関係を結んだ。
 俺も父の探るような視線をかわす為の恋人が欲しかったし、性欲を満たしてくれる存在はありがたかった。

 それからしばらくは美紀と恋人関係だった。
 
 姉が欲しい。
 けれど、それ以上に姉の幸せは守りたかったのだ……。
 
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