黄金(きん)の林檎
 私が3歳の頃、両親が離婚した。

 原因は母、ゆりあの不倫と繰り返される窃盗癖のせいだった。
 母は私の親権を手に入れ、父親、一行(かずゆき)から高額な養育費を一括で手に入れた。

 それから母親の不倫相手とあまり掃除のされていないボロボロのアパートでの共同生活が始まった。

 男は母より1つ年上で無職。
 いつもジャージを着て無精ひげを生やしたチャラそうな細身の男だった。

 父と違い不倫相手とは価値観が似ていたようで、母はその男に夢中だった。
 母親は私の養育費でその男と毎日遊びまわり、まだ幼かった私をアパートに1人残して殆ど帰らずほぼ放置。
 お腹がすくと部屋に落ちているお菓子を食べて飢えをしのいでいた記憶しかない。

 働かず遊んでばかりいれば金などいくらっても足りない。
 すぐに養育費は底をついた。

 それからの生活は時々入ってくる男のアルバイト代と母の窃盗品で暮らすようになった。
 私がまだ小さいうちは見つかった時、母親の同情を誘う道具とされ。
 幼稚園くらいになれば手引きや万引きをさせられるようになった。

 繰り返される窃盗の手伝い。
 発見された時の人の蔑み。
 私は感情を失くし、母親にとって私は都合のいい道具になっていた。

 そんな荒んだ生活は、まず男、次に母親が優先され、私はいつも忘れ去られていた。
 そのせいでいつも満腹になることはなく、私は栄養不足による発達遅れで体は小さく痩せこけていた。

 そして中学生になると、母親に援助交際をして稼ぐように命令されたのだ。
 母親に無理やり引っ張られるようにラブホテルの近くまで連れて行かれ、脂ぎった小太りの中年男性に引き合わされた時、初めて自分の意思で母親を振り切って逃走した。
 しかし大通りを出たとたん転倒し、足の骨を折りそのまま気絶してしまったのだ。

 気づくと病院のベットに寝ており、点滴の管に繋がれていた。
 ベットの横には見たことも無い中年の男女が私の顔を心配そうに見つめていた。

 スーツを着ていかにも真面目そうな男と、男に寄り添うようにしていた優しそうな綺麗な女の人。
 その男が私の父、一行で、女は父親の再婚相手の喜和子だった。

 父の話しでは私は転倒して気絶後、病院に運ばれ栄養失調のこともあり入院。
 母親は私が逃げ出した後近くのデパートで窃盗し、車で逃走の際、運転操作を誤った男によって電柱に突っ込み2人とも亡くなったとの事だった。
 
< 2 / 18 >

この作品をシェア

pagetop