黄金(きん)の林檎
 この時の稜は前みたいにすごく優しくて、だったから離れたくなくて私は自分お部屋から毛布を持ってくるとソファーの上でそれに包まり、クーラーのスイッチを入れた。
 そんな私の行動に気づいた稜が本当に嬉しそうに笑ってくれたのだ。

 その笑顔を見た時、初めて自分の気持ちに気づいた。
 弟ではなく異性として稜が好きだと……。

 自分の気持ちに気づいたとたん、心は稜へと急速に傾いていく。
 そんな自分が怖かった。

 好きだと、自覚すると同時に家族のことが気になった。

 私が稜を好きでも稜は家族だ。
 しかも半分であっても血が繋がっている。
 想う相手としては誰からも許してもらえる相手じゃない。

 それからは私の気持ちを家族に気づかれてしまうのではないかと怯えるようになった。

 過去の経験が今の自分がどれほど幸せなのかを教えてくれる。
 だからこそ家族を失いたくはなかった。

 そんな中、反抗期が終わったのか稜は以前のように私を大切にしてくれるようになっていった。

 私が大学生になる頃には、自分の気持ちを隠すことが上手くなったと思う。
 けれど想いは止めることが出来ずに苦しんでいた……。

 父は営業の関係上、海外への出張が多い。
 喜和子さんは看護師をしているので夜勤があり、夜、2人だけで留守番することもあった。
 そういう夜が一番辛かった。

 2人っきりでいたくないが、かといって避けるわけにもいかない。
 優しくしてくれる稜が私を苦しめる。

 反抗期の頃のように冷たくしてくれればいい。
 そうしたらケンカして仲が悪くなったように見せて距離を置くことが出来るのに……。

 そばにいて優しくしてくれる行動に心が躍る。
 彼女が出来ないことが、気持ちをあきらめさせてくれない。
 つらい迷路で私は迷っていた。
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