黄金(きん)の林檎
 ふわふわ。
 ゆらゆら。
 ぽかぽかと温かく気持ちがいい。

 目を開けると誰かの耳が見えた。
 その耳が稜の耳だということがすぐにわかった。
 私は稜の背中の背負われているのだ。

 いつものように友達が連絡し、稜が迎えに来てくれたのだろう。
 飲み会はかなり頻繁なのに稜は一度も迎えを断ったことがない。
 今朝のように喜和子さんに頼まれたからかもしれないけれど、稜が私を心配して迎えに来てくれていることだけはわかる。

 私の家族で私の好きな人。

 私は揺られながらサークルをやめようと決めた。
 やっぱり私の知らない所で稜が、稜に好意を持っている女の子と一緒にいるのが嫌だ。
 それに大切な人達に心配をさせたくはない。

 家族であることが辛いけれど、家族でなければ幸せを知ることはなかった。
 だから私は自分の気持ちを隠す。

 こうして目を閉じて闇が広がるように、私の恋も闇が広がっていた……。
 
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