青の向こう



彼女はキッチンの横にある棚から薬箱を取り出していた。

百均で買った透明なボックスにキャラクターのシールがベタベタ貼られた箱。

低学年の時に好きだったキャラクターのものだった。


確か名前はムウちゃん。

紫色の髪をした少女が不思議で夢のような世界を色んな仲間と旅をするファンタジー。

主人公のムウちゃんが変身して戦う所が大好きで、衣装もサンタに貰って得意げに呪文を唱えたりしてたっけ。


と、私が薬箱をじっと見ている事に気付いた響ちゃんが口元を緩めた。


「小さい頃好きだったんだけど貼られたままで。お姉さんも好きだった?」

けど年代とか違うかな、と独り言のように呟くのが聞こえた。


その言葉に多少心の中でクスリと笑いながら

「ううん、私も好きだったよ」

と答えた。


すると彼女の目がきらっと光る。


「知ってるんだ!面白いよね、これ。私は途中で仲間になるライオンが好きでね――」


薬箱を探りながらもムウちゃんの内容を話す彼女はやっぱり子供だった。

無邪気で無垢な頬がいつもより高い位置にある。
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