流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
第0話「All Zero」

┗さよなら、クドリャフカ。


「テレメトリー取得しました。生体データ、オールゼロ。クドリャフカ――――……」



「死亡しました」



 絶望的な数値を示す計器を読み上げる声は震え、いくつもの鳴咽が重なり合って静かに部屋を満たしていく。


 クドリャフカが、死んだ…………


 片隅でその事実を聞いた僕は、じんわりと胸の中に残酷な現実が染み渡っていくのを感じていた。

 けれど、思考はその事実を否定するかのように凍りつき、僕はただ立ち尽くしていた。

 涙だけはその事実を受け入れ、頬を濡らしている。



 彼女が宇宙に旅立ってから、たった六時間後の事だった。

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