流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜

「乗って」


 ユリヤさんに背中を押され、発車台の昇降機に乗り込む。

 上がった先には、エンジニアがいた。

 ユリヤさんは真っ直ぐにエンジニアの元に向かい、トラスキンさんはビンのキャップを開ける。


「エアホールを開けて欲しいの」


 ユリヤさんが示したのは、ネジで止められた小さなエアホールだった。


「はい、わかりました」


 エンジニアは何かを疑う様子もなく、素直にそこを開けた。


「おい、これ」


 トラスキンさんが後ろから押し付けてきたのは、水の入った注射器だった。

 これで、エアホールからクドリャフカに水をあげることが出来る。

 クドリャフカは、スプートニクの窓の向こうで、不思議そうに僕らを見ていた。
< 101 / 132 >

この作品をシェア

pagetop