流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
「乗って」
ユリヤさんに背中を押され、発車台の昇降機に乗り込む。
上がった先には、エンジニアがいた。
ユリヤさんは真っ直ぐにエンジニアの元に向かい、トラスキンさんはビンのキャップを開ける。
「エアホールを開けて欲しいの」
ユリヤさんが示したのは、ネジで止められた小さなエアホールだった。
「はい、わかりました」
エンジニアは何かを疑う様子もなく、素直にそこを開けた。
「おい、これ」
トラスキンさんが後ろから押し付けてきたのは、水の入った注射器だった。
これで、エアホールからクドリャフカに水をあげることが出来る。
クドリャフカは、スプートニクの窓の向こうで、不思議そうに僕らを見ていた。