流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
「クドリャフカに水をあげたいの……しばらく、目をつぶっていてくれないかしら?」
「こ、困りますよ!」
エンジニアたちは、首を縦には振ってくれない。
「こんなこと、局長に知られたら……」
おどおどと目を泳がせ、首は横にばかり振られる。
「ただじゃすみませんよ」
故意に圧力を変化させたりと、打ち上げ遅延に繋がることをしてしまったのだ。
政府が深く介入しているこの計画を、頓挫させるわけにはいかない。
そんなことをしたら、宇宙開発局の全員に迷惑がかかり、ただでは済まないだろう。
それでも……
「お願いします!」
「お願いします!」
「お願いします!」
三人で、深々と頭を下げて懇願した。
「あっ、頭を上げてくださいよ……」
困惑するエンジニアはしどろもどろに手を差し出すが、どうしたらいいのかわからない。
ちゃんとクドリャフカに水を飲ませてあげるためにも、エンジニアには了承を得なければならない。
邪魔をされるわけにはいかなかった。
「お願いします!」
「お願いします!」
「お願いします!」
エンジニアが首を縦に振るまで、頭を上げるつもりはなかった。