流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
 僕も、ユリヤさんも、トラスキンさんも、チェルノコフさんも、局長も、みんなは……憔悴しきり、絶望を顔に貼り付けている。

 予感がした。

 僕らはきっと傷つくだろう。

 それでも、その傷はクドリャフカの傷よりなんと優しいんだろう。

 クドリャフカは僕らの裏切りのために傷ついているというのに、僕らはクドリャフカへの愛情のために傷つく。

 地に足をつけている、僕らの方が幸せだ。

 決してこの涙は、実験の失敗を歎いているわけじゃない。

 クドリャフカを思っての涙なんだ。

 裏切ったというのに、この心はなんて矛盾しているんだろう。

 それでも、これが正直な気持ちなんだよ。

 クドリャフカ。

 僕は管制室の隅を向いて目を閉じた。

 涙でにじんだ室内が消え、血を透かす瞼の裏にクドリャフカの姿が浮かぶ。


 きゃん!


 空耳だ。
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