流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
 なのに、涙だけはその事実を受け止め頬を伝う。

 もう二度と会えないことはわかっていた。

 例え、今生きていようがいなかろうが、ここにクドリャフカがいない事実は変わらない。

 それなのに、涙が出る。

 死ぬってなんだろう。

 わからないのに、涙が……

 まだ、クドリャフカが宇宙に旅立って六時間しか経っていなかった。

 僕は、少しでも長く生きていて欲しいと望んでいたはずだ。

 なのに、これでよかったと思う自分がいる。

 さっさと命を落とすことが出来たのは、むしろ彼女にとっては幸運だったのではないか?

 ひとりぼっちの宇宙でストレスに押し潰されながら、苦しみ生きながらえるよりは……

 違う。

 違うんだ……

 生きていて欲しかったよ、クドリャフカ。

 例え苦しくても、本当は君も生きたかったんだと僕は信じてる。

 だって、命はそういうものだろう?

 だから、こんなの間違ってるんだ。

 クドリャフカ、僕は苦しい。

 ここにナイフがあったら、自分で自分の喉を掻き切りたいぐらい、苦しいんだよ。

 掻き切れば、君の元へ行くことが出来るだろうか?

 涙が止まらない。

 このままじゃ、体中の水分がなくなってしまうのではないかと不安になるぐらい、止まらない。

 溢れ続ける。

 ボロボロと、ボロボロと、とめどなく。
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