流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜

┣閉じた世界


「久し、ぶり」

「お久しぶりです……」


 宇宙開発局を辞めた時に一緒に捨て置いてきたつもりの恋心が、わずかによみがえる。


「急に電話してごめんね」

「いえっ、それは別に構わないんですけど……僕、電話番号教えましたっけ?」


 受話器越しの声が、耳元で囁かれているようだ。


「局長に、実家の電話番号を教えてもらったの。そしたら、こっちだって教えてくださって……」

「そうですか、母さんが……」


 ドキドキしながら、久しぶりにユリヤさんと話す。


「それで、今日電話したのは…………クドリャフカのことなの」

「クドリャフカ」


 心臓が凍った気がした。

 クドリャフカが、今更何だというのだろう。

 まさか実は生きていたとでも言うつもりか?

 例えそうだとしても、とっくに酸素も餌も尽きてしまっているんだ。

 餓死か酸欠死している。
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