流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
「クドリャフカ……」
強烈な光に目を細め、その最後を見届ける。
そして、その光はロケットのエンジン音を思わせるような音と共に岬の先端に到達した。
「っ……」
その轟音と衝撃に砂浜に尻餅をつき、呆然と岬の先端を見つめる。
けれど、我に還るやいなや僕は走り出した。
「クドリャフカ!」
岬の先端に向かって砂浜を駆け抜け、岩場を駆け登った。
そして、乱れた呼吸を整えながら、岬の先端に立つ。
それはすぐに見つかった。
墜落の衝撃で、地面が少し凹んでいる。
その窪みの中央に、真っ黒に焼けた金属片が落ちていた。
それは、間違いなくスプートニク2号の破片だった。
その破片の前で膝を折り、そっと手を伸ばす。
けれど、強烈な熱気に行く手を阻まれ、手は破片に届く前に地面に落ちた。
流れ星は、まだ強い熱を秘めている。
さわれば、火傷なんて優しい言葉では済まないだろう。
それでも、触りたかった。
強く強く抱きしめたかった。
めちゃくちゃに抱きしめて、キスの嵐を贈りたい。
これはスプートニク2号の破片で、これはクドリャフカの骨だ。
頬を伝った涙が一滴、その金属片の上に落ちる。
「おかえり、クドリャフカ……」
ジュッと音を立てて、涙は一瞬にして蒸発する。
僕は自分の足元に、クドリャフカの亡きがらを見た気がした。