流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
 人類はクドリャフカの死を踏み台にして、更なる発展を遂げるだろう。

 僕は、クドリャフカの亡きがらを踏み付けて、これからも生きていく。

 生きていかなければならない。

 それから逃れることは出来ないし、逃れることは許されない。

 許さない。

 これまで僕たちは、どれだけ罪のない命を奪ってきただろう。

 食べるために命を奪ってきた。

 暖と見栄のために毛皮を剥いだ。

 害獣だからと闘ってきた。

 戦争に利用するために訓練して、爆弾をくくりつけた。

 安全性の確認のために、苦しい目に合わせてきた。

 人間の命を救う名目で、たくさんの命を犠牲にしてきた。

 人間のよき隣人として、人間のよきパートナーとして存在してくれる命たち。

 それに対して、人間はよき隣人でありよきパートナーでいられているのだろうか?

 クドリャフカの死がもたらした物は大きかっけれど、クドリャフカの死が本当に必要なものだったのかわからない。

 僕らは無用な死をもたらしすぎた。

 踏み付ける屍の山。

 動物たちだけじゃない。

 人間の亡きがらも混ざったその山。

 その頂点で僕らは生きている。

 死んで許しを請うことも出来ない。

 それは最悪な選択だ。

 僕らは屍の頂点で生きていく。

 償いの術を探してさ迷う。

 積み重なった罪の山は、決して償いきれる物でないのだとしても。

 僕は生きていく。

 クドリャフカへの愛がただの虚栄だとしても。

 クドリャフカの死を悲しんだ愛犬家たち。

 もし、クドリャフカが可愛い小犬でなくても、悲しんでくれただろうか?

 僕は悲しんだだろうか?
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