流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
┣欲と夢の境目
「でっかぁ……」
訓練犬の中から選び抜かれたデジクとツガンの二匹が入ったケージを両手に下げ、僕は遠くに見えるR-1Vロケットを見つめていた。
安全のため、ロケット発射場はただっぴろい草原のド真ん中に立ち、その近くには組み立て工場や待避壕がある。
「ふふふっ、凄いでしょ。私たちがあれを設計したのよ」
ぞろぞろと基地内に入っていく開発局員の列の中で立ち止まっていると、後ろからユリヤさんが顔を出してきた。
「本当にあんな大きな物が飛ぶんですか?」
科学に通じていない僕には、とても信じられない。
飛行機が飛んでいるだけでも僕には不思議でならないのだから。
「もちろん。明日の朝、ツガンとデジクを乗せて飛ぶのよ」
上空100キロ。
その途方もない数字。
無重力。
その知らない感覚。
それをツガンとデジクは体感することになるんだ。
人間のために。
宇宙へ行くという人間の夢のために、データを取るたくさんの計器を体につけて、実験される。
二人はどこまで理解できているのだろう。
これから何が起こるのか、なんのために自分が拾われてきたのか……
理解してないから、僕らに懐くのだろうか。
両手に持ったケージが重い。
命の重みが……