流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
「見えた! パラシュートだ」
誰かが叫んだ声が聞こえ、空に向かっていくつもの手が伸ばされる。
「ツガンだ!」
「デジクだ!」
「ロケットが帰ってきたぞ!」
いくつもの人差し指が示す方向には、ツガンとデジクの乗るロケットの先端が切り離され、真っ白なパラシュートを広げてゆるゆると下りてくる姿が見えた。
機体に損傷はなく、今のところ予定通りだった。
あとは、ツガンとデジクの無事さえ確認できれば……
ザリッ
靴が小石を踏む音がした。
見れば、着地するまで動くなと言っていた張本人であるチェルノコフさんが踵を返し、車に乗り込んでいるところだった。
「チェルノコフさん、ずるいですよ!」
誰ともなしに叫び、いっせいに走り出し、それぞれの車に飛び込む。
青い空に映えるパラシュートの白を目印に、着地地点に先回りしようとする。
僕はユリヤさんがチェルノコフさんの車の後部座席に乗り込むのを見て、思わずその後に続いて乗り込んでしまう。
ツガンとデジクを心配しながらも、自分の恋愛に走ってしまった自分に嫌気がさす。
けれど、僕の後ろからもエンジニアたちが乗り込んでくるので、僕はユリヤさんと密着することになった。
嬉しくないわけがない。
車に乗り込めるだけ乗り込んで、パラシュートを追いかける。