流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜

「だーかーらー」


 僕もまた同じことを言おうとしたけれど、首を横に振られる。


「そっちじゃなくて」


 ニヤリ、と笑った。


「愛しの君との、一泊旅行のほう」


 一気に顔が熱を帯びた。


「いっ、一泊旅行って仕事じゃないですか! それに、泊まったのはロケット基地ですし、男女別の建物でしたし、別に二人っきりってわけじゃないですし、それにほとんど別行動でしたし、それにそれに……」


 慌てる僕を、相変わらず冷静な目で見ているトラスキンさん。


「顔真っ赤だなー。なんかしたのか? 夜ばい?」

「よッ、ヨバッ……!」


 その言葉にますます顔が赤くなり、本当に鼻血が出そうだった。


「まさか、そんな……」

「だろうな」


 あっさりと引き下がるトラスキンさんに、からかわれたことを知る。


「でも、本当になにもなかったのか?」

「なんにもありませんよ」


 僕はそっぽを向いてそう答えるが、トラスキンさんのニヤニヤした視線を感じていた。


「本当に?」


 改めて確認されると、なんだか嘘がつけなくなってしまう。


「…………手を、握りました」


 そっと握りしめた、彼女の手の柔らかさが忘れられない。


「…………たったそれだけ? おまえは中学生か!」

「いーじゃないですかっ、別に!」
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