流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
 今回のフライトに選ばれたのは、デジクとリサの二匹だった。

 デジクはこれで二回目のフライトだ。

 きっと前回と同じように、無事帰ってこれるものと思っていただろう。

 ツガンではなくデジクが選ばれたのは、ツガンが前回の実験の際、着地の衝撃の影響と思われる怪我を負っていたからだ。

 怪我をしなかった幸運が、不幸に繋がる。

 はじめっから、命がけの実験だとはわかっていた。

 けれど、割り切れない。

 リサはこれがはじめてのフライトで、何が起きているのか、何が起きるのか、わからないだろう。


「デジク! リサ!」


 傾き彼方へ落ちていくロケットを追い、駆け出そうと足を一歩踏み出す。


「ダメ」


 低い声でその二文字をつぶやき、僕の手を掴んだのは厳しい表情のユリヤさんだった。

 僕は一瞬ユリヤさんを振り返り、すぐにまた空を見上げる。

 ロケットが落ちていく。


 デジクとリサを乗せたロケットが、草原に――落ちた。


 僕の手を掴んだユリヤさんの手に力がこもり、少し痛い。

 痛い……
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