流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
 気を紛らわす仕事もなく、思う存分悲しみに浸ってられるというわけだ。

 弔い合戦に参加する力もない。


「……研究を、中止するわけにはいかないんでしょうか」


 危険は常に付き纏う。

 どれだけ安全性の高いロケットを造ろうと、100%はありえない。

 こんな悲劇、一回で済むとは思えなかった。

 きっと、ロケット基地の墓地は広がっていくだろう。

 僕は、この墓場のある基地に犬たちを連れてこなければならない。


「無理よ……」


 ユリヤさんのか細い声が、暗がりを生むようにささやいた。

 わかっている。

 わかっているんだ。

 国の命令で始められたロケット開発を止めることなんて、僕らには出来やしない。

 ロケット開発には、多くの人間の命がかかっている。

 僕の生まれ育ったこの国の命が。

 ロケット開発の真の目的は、対立する大国の核ミサイルからこの国を守ることだった。

 対立する大国はこの国に核を打ち込む事が出来る。

 けれど、この国は相手国に核を打ち込めるだけのロケットミサイルがない。

 それがどれだけこの国にとって不利な状況なのかは、明らかだ。

 だからロケット開発は国家プロジェクトであり、国家機密であり、軍事施設で開発されている。

 大国と対立していなければ、そもそも核ミサイルを開発する必要がなかったのに。

 けれど、どうすれば平和になるかなんて……
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