流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
 局長は、立派な人だった。

 壮大な夢を追う人だった。

 人工衛星、人間を月や火星に行かせること、宇宙ステーションや月面基地の設立などを語る、凡人には途方にもない夢へ邁進する人だった。


 それこそ、ロケットのためならなんでもしてしまいそうな……


 違うと頭の中で局長を尊敬する自分がどんなにわめいても、疑惑は膨らむ一方だった。

 自分では手におえず、もうどうしようもない。

 局長も、デジクとリサの死をとても悲しんていた。

 それは、局長がツガンを駒として扱うようなことをしない人だという証明になるだろうか?

 けれど、局長が悲しんだのは本当にデジクとリサの死なのか?

 局長が本当に悲しんだのは、実験が失敗したということの方かもしれない。

 もしかしたら、デジクとリサの死は二の次だったのかもしれない。

 そんな不毛な考えが続き、不信感は留まるところを知らなかった。
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