流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
 もしかしたら、クドリャフカが母親になるかもしれない……そう思うと、なんだか不思議な心地がした。

 自分でスカウトした唯一の犬で、子犬の頃から面倒を見てきた子だ。

 拾ってきてからも、ずいぶん経つ。

 もうすっかり大人で、立派な女性に成長している。

 小犬だけれど、子犬じゃない。

 体は小さいままだから失念してしまっていた。


「なんだか、複雑な気持ちです」


 もちろん、クドリャフカだけじゃない。

 他のみんなだって毎日世話をして可愛がって、もし自分が結婚して子供ができたらこんな気持ちだろうかと思ってしまうぐらいだ。


「娘を嫁に出す父親の気持ちって、こんなんでしょうか……」

「おおげさだなぁ」


 トラスキンさんにクスクスと笑われて、僕は少しムッとする。

 トラスキンさんはどこかクールだ。

 必要以上に犬たちに対して心を傾けないというか……
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