流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
 僕はこっそりとトラスキンさんの飼い犬であるイヴァンを盗み見る。

 どこかここの犬たちには仕事だと割り切ってるような愛情の与え方をするトラスキンさん。

 自分の犬ではなく宇宙開発局の実験犬であることを忘れないようにしているような。

 家では、イヴァンとどんな風に過ごしているのだろう。


 ヴぁん?


 じっと見つめる僕に、イヴァンは気が抜けるような声を出した。

 イヴァンはかわいらしい碧いどんぐり眼で僕を見つめ、ちょこんと大人しく座り込み、しっぽを振っている。

 顔もかわいくて、性格も穏やかで誠実そうな犬だ。

 いい婿かもしれない……

 そんな考えが過ぎってしまい、僕は頭を振ってそれを振り払おうとする。


「いや、でもあんな馬の骨!」

「俺の犬だ!」


 散歩の準備をしていたトラスキンさんからリードが投げられ、また後頭部に一撃をくらってしまった。
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