流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜

「局長には私の方から伝えておきますので、産室の方よろしくお願いします」


 そう言って、生体研究員が部屋を後にする。

 局長……

 僕はツガンがベルゾニスキーさんに引き取られた時と同じ気持ちがした。

 最初に見合い話を持ち込んだのだ誰だろう。

 いつか宇宙旅行士となるアルビナの子供たちは誰に引き取られるのだろう。

 僕はそれを聞けなかった。

 聞きたくなかった。


 ああ、そうか。

 トラスキンさんが、どこか犬たちと一線を引いている理由がわかった。


「アルビナ、元気な子を生んでね」

 きゅーん


 母親になったというのに、甘えた声をだすアルビナに目を細める。

 僕は自分の気持ちをコントロールすることなんて出来ない。

 愛しいと思う気持ちは止められない。

 アルビナの体はやわらかくて温かくて、撫でると毛並みが気持ちよかった。
< 56 / 132 >

この作品をシェア

pagetop