流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
第7話「名前はスプートニク」
┣流れ落ちる大切な時間
「スプートニク(旅の道連れ)?」
「そう、スプートニク1号になったらしい」
僕はクドリャフカを、トラスキンさんはストレルカをシャンプーしながら会話に花を咲かす。
ユリヤさんの予想通り、政府は世界初の人工衛星打ち上に向けて本格的に動き始めるのを許可した。
「変な名前……」
ボソリと本音がもれてしまう。
旅の道連れなんて、なんだか感傷的な響きだ。
「それにしても、局長って本当に凄いよな。党幹部を説得した上に、支持者までいるらしいし」
トラスキンさんがストレルカのしっぽを洗いながら、感嘆する。
僕らが直接局長に会う機会は少ないが、それでも彼のカリスマ性は感じていた。
人望がありすぎて、逆に局長が気に喰わない人間が現れるぐらいだ。
「本当に、そうですよね」
僕は同意を示して、こくりと頷いた。
ガゥッ
お喋りしてないで、さっさとシャンプーを終わらせろ。
といった風に、クドリャフカが鳴く。
「はいはい」
クドリャフカの苦情に従って手を動かすが、トラスキンさんは喋り続ける。
「そういえば、スプートニクを作るのに工場の壁の塗装からなにまで内装を変えさせたらしいよ」
「マジですか!?」
驚いて、また手が止まってしまった。