流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
┗鳴き声はこだまする
ビーッ、ビーッ、ビーッ!
その音が聞こえた瞬間、官制室全体が揺れたように感じた。
ロケットのエンジン音にも負けない歓声が沸き起こり、部屋を震わす。
その声は、肝心のビープ音さえ掻き消すほどだ。
床が揺れる。
誰かが跳びはねた。
地球を無事一周して戻ってきたスプートニク1号が、ビーッビーッと元気な声を発する。
偉業の成功に、僕も感極まって涙が滲む。
みんな抱き合い、くるくると踊り出す。
僕も脇腹にタックルを喰らい、見たらユリヤさんだった。
笑顔で僕を見上げてくる彼女を抱き上げて、僕はくるくると回る。
ビーッ、ビーッ、ビーッ……
またビープ音は遠ざかり、官制室はノイズ音に満たされる。
それでも興奮はおさまらない。
また一時間半経てば、聞こえてくるのだから。
不安など、どこ吹く風で僕らは栄光を称えた。
例え、僕らの喜びとは対照的に、政府の反応はつまらないものでも。
「そうか、よかったな」
という、長官の淡泊な言葉。
スプートニク1号の打ち上げ成功は政府の新聞の一面に載るには載ったが、隅の方の小さな記事に過ぎなかった。
それでも、僕らの宇宙開発局が人類の新しい一歩を踏み出したことには変わりない。
誇りだった。
そして、夜が明けて事態は一変する。