流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
 対立する大国が、先に人工衛星を打ち上げられたことにより、天地をひっくり返したような大騒ぎになっていたのだ。

 これによって、軍事利用のオマケであったはずの人工衛星が、大きくその存在の意味を変えた。

 自分たちが科学技術の最先端を行っていると自負していた大国に、目に物を見せてやれたのだ。

 軍事的利用だけでなく、政治的利用。

 その利用価値に、政府は気がついた。

 気がついてしまった。



 人工衛星一つ打ち上げられないあの国に、更に目に物見せてやろう。





 一ヶ月後、スプートニク2号の打ち上げが決定した。

 それには、犬を乗せることも決められた。


 宇宙から帰る手段はまだない。


 特攻だった。


 死は免れない。



 殺されるんだ。





 僕らが、殺すんだ。



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