流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
┣役者は揃った
『みんな待っている』
宇宙開発局に帰ったクドリャフカを待ち構えていたのは、こんな一通の電報だった。
それは、基地での準備――全ての準備が完了したことを意味していた。
別れの時が迫っている。
基地へ向かう途中の飛行機の中で、僕はこのまま飛行機が落ちてしまえばいいのにと考えていた。
クドリャフカも、一人で死ぬよりはきっと寂しくないだろう。
クドリャフカやアルビナ、ムーカや関係者の人々。
トラスキンさんも乗ったこの飛行機が落ちる。
チェルノコフさんも乗ったこの飛行機が落ちる。
そしたら、スプートニク計画にも大打撃だろう。
ユリヤさんや局長がいくら待っても、基地には誰も来ない。
シートにもたれかかりながら、僕は少し笑っていた。
いっそ操縦室を乗っ取ろうかとか、そんなことを考えて笑っていても、本当の気持ちがどこにあるのかは理解していた。
本当の僕は、少しでも長くクドリャフカに生きていて欲しかった。
スプートニク2号が、少しでも長くスプートニク2号でいられるよう。
クドリャフカの柩になるのが、少しでも遠いことになるように。
僕は、祈る。