流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
 スプートニク2号に取り付けられた窓から見たクドリャフカは落ち着いていて、不安などみじんも感じられない。

 いつもの訓練と同じように、こうやって堪えていればいつか出してもらえると信じているのだろう。

 いつものように褒めてくれると……

 閉ざされた扉は二度と開かない。

 僕らはもうクドリャフカに触れない。

 どんなにクドリャフカを愛おしく思っていても、時代の流れに逆らう力はなかった。


「あっ、ストーブだ!」


 クドリャフカのことを見てくれていた作業員が、寄ってくる。


「ありがとうございます。寒いんじゃないかなって、心配していたんですよ」


 笑顔の作業員にストーブを渡し、彼らがそれに火をつけている間にクドリャフカの窓を覗き込んだ。


「クード、リャ、フ、カ」


 歌うように、コンコン、と窓を指で叩く。

 彼女のどんぐり眼が僕を見返してきた。
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