エコ【超短編】
エコ
キスするぞ、って宣言して身体を引き寄せられた時感じたのは彼の汗だ。肌にその汗は刷り込むように入ってきて、なんとなく不愉快な気分。
夏は最近強くなり続けて、私達の恋人生活まで邪魔をする。
暑いからくっつきたくない。
暑いから触れたくない。
妙な湿度を高める行為は極力避けたかった。
私はその絡み付いた手を丁寧にほどき、私ははてなを浮かべる彼に正直に言った。
「暑いからヤダ」
この距離でさえ、熱気を感じる。
彼は暑苦しくはない。暑い男ではあるが。
扇風機が壊れてしまった、クーラーも今日寿命だった。なんという不運。窓を全開にして、網戸にして私達は声をできるだけ抑えて話す。
だから彼が不機嫌そうに眉をしかめるだけで済んだ。
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