deep forest -深い森-
「深見さま、申し訳ございません。あの方の御身分を証す事は、わたくしには出来ません…」
と、言って頭を下げた。
「…どうしてもか?」
「申し訳ございません!」
「深見の、園生が言ってもか?」
「申し訳ございません!まことに、申し訳ございません!」
使用人の男は、土下座をして謝っている。
そうまでして口を割らないという事は、深見よりも強い勢力に守られたオンナだという事だ。
園生は、フッと苦笑いをすると。
「もうイイ。顔を上げろ」
と、言って、梨乃の消えた洋館の扉に視線を向けた。
追いかけた所で、もう中にはいないだろう。
オレから逃げる為に、会場の中を通り過ぎ、正門から帰ったに違いない。
「…深見さま?」
男は、オドオドとした態度で園生の顔色を伺っている。
深山咲も怖いが、深見も恐ろしいのだ。
園生は呆れたような顔で。
「もう立て。無抵抗な奴を殴って、憂さを晴らす趣味はない」
と、言って溜息を吐いた。
「…も、申し訳ございません!決して、そんな…」
慌てて立ち上がって、直角に頭を下げる。背中で食事が出来そうだ。
園生は男を見て腕を組むと。