deep forest -深い森-
梨乃
風の音で目が醒めた。
広いベッドの隣には、既に人の気配はない。
梨乃は随分と寝過ごしてしまったようだった。
美しい装飾品でもある壁掛けの時計を見ると、短針が正午を過ぎていた。
寝入ったのが明け方とはいえ、惰眠をむさぼり過ぎてしまった。
今日は、離れて暮らす姉の婚約披露パーティーがある。行きたくはないが、深山咲(みやまさき)家の一員として、会場に足を運ばない訳にはいかないだろう。
「…イタ」
軽く足を動かしてみるものの、うまくいかず、鈍い痛みが走った。
やはり私には、ダンスは踊れそうにない。
梨乃はベッドメイキングをしながら、小さく溜息をついた……