deep forest -深い森-
「…お兄様…」
梨乃は、伸びの終わった猫のような艶やかさで蓮實を見ると。
「梨乃は湯浴みに参ります」
と、言ってカヨとメイド2人を引き連れて、奥の扉へと消えた。
「毎日梨乃さまのお世話をさせていただいている私でも、梨乃さまの、あの艶やかさには息をのみます。楠木さまも…きっと…」
片桐は、梨乃の姿を追わないように、スッと視線を床に落とし、ソファー下に敷かれた赤い絨毯のペイズリー模様を眺めた。
この館で勤める以上、梨乃には関心をもたない方がいい。
あの美しい少女に、すがりついた老画家は、その日の夜に姿を消した。
自分には知らされていない闇が、この館『伽羅』にはある。
「下衆な男が梨乃に現実を求めるなど愚の骨頂」
ふふ…と、蓮實は笑うと、片桐にコートを脱いで手渡した。
「承知しております」
俯いたままの片桐。
「片桐、オマエは臆病で小賢しい。私はオマエのそこが気に入っているよ…」
そう言うと蓮實は、続けて。
「楠木の件、オマエの好きにしろ」
と、片桐の肩を、すれ違いざまに叩き、広い階段を上がって行った。
二階に上がると言う事は、今夜はもう声をかけるな…と、いう事だ。
梨乃は、伸びの終わった猫のような艶やかさで蓮實を見ると。
「梨乃は湯浴みに参ります」
と、言ってカヨとメイド2人を引き連れて、奥の扉へと消えた。
「毎日梨乃さまのお世話をさせていただいている私でも、梨乃さまの、あの艶やかさには息をのみます。楠木さまも…きっと…」
片桐は、梨乃の姿を追わないように、スッと視線を床に落とし、ソファー下に敷かれた赤い絨毯のペイズリー模様を眺めた。
この館で勤める以上、梨乃には関心をもたない方がいい。
あの美しい少女に、すがりついた老画家は、その日の夜に姿を消した。
自分には知らされていない闇が、この館『伽羅』にはある。
「下衆な男が梨乃に現実を求めるなど愚の骨頂」
ふふ…と、蓮實は笑うと、片桐にコートを脱いで手渡した。
「承知しております」
俯いたままの片桐。
「片桐、オマエは臆病で小賢しい。私はオマエのそこが気に入っているよ…」
そう言うと蓮實は、続けて。
「楠木の件、オマエの好きにしろ」
と、片桐の肩を、すれ違いざまに叩き、広い階段を上がって行った。
二階に上がると言う事は、今夜はもう声をかけるな…と、いう事だ。