deep forest -深い森-
片桐は蓮實の背中に、言葉を返せないまま頭を下げた。


「今夜は立憲政○党の魑魅魍魎…か…梨乃さまも気の毒に…」


そして、蓮實が部屋に入るのを確認すると、片桐は小さく呟いていた。


蓮實さまが梨乃さまを愛さないのなら。

妖怪のような好色爺に見つめられるよりも、楠木のような男にでも輿入れし、大切にされた方が幸せなのではないか。

……などと。

思った自分が、間違いだったのだ。


梨乃に逢いたくて、仕事を放り投げ、毎日通い続ける楠木が、少しだけ…

気の毒に思えただけだ。

蓮實さまは、梨乃さまを大切に思われている。


私などには解らぬ、彼なりの方法で。



決して黒に染まる事のない…



『汚せない美少女』



深山咲梨乃を……
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