deep forest -深い森-
その涼の言葉を聞いた園生は
「『深い森』の姫には迂闊に近付くなと言う警告か」
と、言って自分を見つめる半裸の父親と視線を合わせた。
「『私は彼女を救いたい』と画廊で呆けた声で呟いていたのは彼が姿を消す十日程前の事だ」
「・・・」
「自分一人で天に帰ったという事は、堕天使は未だ羽をもがれたまま『深い森』のどこかに幽閉されているのだろうね」
「オヤジ殿は『深い森』の場所を?」
「売れない芸術家の知るところではないな。君と仲良しのじい様にならば届く話かもしれんがね」
少しおどけた素振りでそう言うと、涼は女からグラスを受け取り、残り少なくなっていた葡萄酒を全て飲み干した。