Don’t injure me!

鞄の中に忍ばせてある御守りのナイフにそっと触れる壱川。

ひんやりとした感触に、次第次第に落ち着きを取り戻す。


そうだ、偶然だ。もしくは幻覚・幻聴だったのだろう。


もう一度深く息を吐き、壱川はふらつく足取りで裏路地から抜けた。

念のため、と辺りに目を配り葡萄少年の目立つ銀頭を探してみるが、どこにもその影はなかった。


ホッと裏路地を背にまた歩もうと右足を出す。



その背後に、ニヒルに笑う葡萄少年。



「?!」

「うはっ、みぃーつけた」

「なんっ……」



なんでここにっ、だってオカシイそうオカシイんだよぼくはこの子を知らないし見たこともないのになんでぼくを知ってるのこの子はねえなんでなのねえなんでなんでなんでっ……


「『なんでぼくに近づくの』ってぇ、顔に書いてあんよ、レーンちゃん」

「ひっ…」

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