Don’t injure me!
混乱、恐怖、疑問の渦巻く脳内で壱川のとる行動はただひとつ。
鞄に忍ばせておいた “御守り” を手に持ち、背後に佇む恐怖へと振り返る。
「っ、レンちゃんキケーン。俺に刺さったらどうすんのー?」
「るっさい……うるさいうるさいッ、ぼくは知らない君なんて知らないし君もぼくなんて知らないはずっ…」
「なんにも知らない?」
ズイッと顔を近づけ、壱川の顔を覗きこむように目をクリクリ動かす葡萄少年。
壱川の目が一瞬揺らぐ。
「俺はレンちゃんを知ってるよ。だっていつも見てたから。へらへら笑って本性がわからなくて、でも時々冷静さが欠けてその“御守り”を振り回すレンちゃんもなかなかどうして綺麗だったよ。俺の部屋に閉じ込めておきたいくらいに、ていうかレンちゃんはもうすぐ俺のモノになるんだからいいよねレンちゃん。うん分かってるよレンちゃんも俺といたいんだよね。だってそうだろ俺はレンちゃんを思っていつも生きてたんだからレンちゃんも同じくらい俺を思わなくちゃ、だって俺たちはウンメイノヒトなんだからねえレンちゃん」
ニヒルに笑う欲深き子供の言葉が、ゆっくりと壱川を侵食してゆく。