Don’t injure me!



若人の集うお洒落な喫茶店にて。

チャラチャラとした今時な服に身を包む男性陣の中に、一際目立つひとりの男性がコーヒーを飲んでいた。

この場合の『目立つ』とは、決してより一層派手だとか、そんな意味ではない。


目立たなさすぎて、逆に目立つ。


ひとりだけ黒のパーカーに身を包み、ぎゃはぎゃはと笑いこげる男性に便乗せず静かにコーヒーを飲んでいるのだ。

勿論、話しかけられれば対応はするが。



「壱川(いちかわ)、そういやお前、なんでいっつもナイフ持ち歩いてんだ?」



ふと鞄の中から見えたナイフに、勇敢なのか馬鹿なのか。なんの躊躇もなしにひとりが尋ねる。

< 5 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop