その衝動の果て…【完】
狂ってるのぐらい…

わかってる。僕はオカシイ。そんなことは今更だろう…

それを抱えてただ生きるしかない僕の気持ちなんて…

こいつにわかるはずないじゃないか。

結局オヤジは、最後には自分の欲しいものを手に入れたのだから…


顔を上げた時、オヤジと目が合った。

怪物を見るような、それでいて切なく胸が締め付けられるように

寂しそうなオヤジの瞳。


僕はその時のオヤジの瞳を…

生涯忘れることができなかった。

そのままオヤジは僕を家から叩き出した。


僕がこんなことをしでかすまでに至るのは…

自分にはどうすることもできない理不尽な運命のせい。

表面上は、中流家庭で育ち何の不満もなさそうに見える僕だったが…

しかし僕を取り巻く環境は複雑極まりなかった。

父のヒミツ。母のヒミツ。僕のヒミツ…

人は誰しも秘密を抱えて生きているのかもしれない。

知らなくても生きてゆけるのに、

僕は人が持っていない能力(ちから)を使ってそのパンドラの箱を

無理矢理こじ開けてしまった…


僕はカノジョを守る。

ただそれだけのためにアイツに創られ、この世に送り込まれた身代わり。

僕はアイツの一部であり、アイツの感情をこの身に宿している。

それゆえに…

こんな衝動を抱え込むことになった。
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