恋はとなりに


家にいるときはカケル君と過ごすことが多かった。

カケル君は会社と家を往復してるだけで、ほとんど出掛けたりもしなかった。

あたしが出掛けてるときのことはわからないけど。

翌日の月曜日。
いつものように学校に行った。


東館の1階は広くて、隅にテーブルと椅子が4セット並んでいる。その2番目のテーブルにももちゃんと河瀬君がいた。

いつもこの辺に3人で待ち合わせている。

そしていつもあたしが遅れてくる。
遠くから見たら何やら深刻そうに話をしているようたったが、あたしに気づくとももちゃんは笑顔になった。


河瀬君は元気がなかった。

「どうしたの?なんか、あったの?河瀬君。」

さすがに気になって聞いた。

「何でもないよ。」

河瀬君は無理に笑顔を作ってるみたい。

ももちゃんは席をたった。

あたしと河瀬君二人きりで向かい合って座っていた。

河瀬君の笑顔は消えていた。

「俺のことすき?」

突然河瀬君が聞いてきた。

あたしは2、3秒止まってしまった。


「…………、うん。」

弱々しく答えた。

「俺はさ、友達に戻りたいんだ。」

え…………………………。


驚いて声にならない。


「付き合ってると、疲れちゃって。もう限界なんだよね。俺から誘っといて勝手なのはわかってる。」

いや……って言いたいのに、声が出ない。

いつの間にか周りの生徒たちもいなくなって、あたしと河瀬君は1階に二人きりになっていた。


「…………別れるってこと?」

やっと声が出た。


あたしはなんだかわからなかった。
付き合ってることも、別れるってこともよくわからなかった。

でも、自分で“別れる”と言葉を口にしたら悲しい気持ちが込み上げていた。


「そんな悲しそうな顔、しないでよ。」

河瀬君は泣きそうな顔で笑った。

それを見て余計に悲しくなった。


河瀬君は静かに席を立って、そのままその日は会うことがなかった。


河瀬君が去ったあと、ももちゃんが戻ってきた。



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