恋はとなりに
夜、カケル君が部屋に入ってきた。
あたしはベッドにうつぶせたまま
「出てって。」
と言った。
カケル君はベッドの前にしゃがみこみあたしの顔を覗きこんだ。
あたしは髪の毛越しにカケル君の顔が見えたので、体の向きを変えてカケル君に背を向けた。
そしたら今度はカケル君は
ベッドに上がってきた。
あたしの隣に横になった。
それにはびっくりして、起き上がった。
「やめてよ。」
「彼氏と別れたんだって?」
「・・・・・・。」
だまりこむあたし。
「コウタから聞いたよ。コウタ心配してたよ。」
あたしはベッドから起き上がり、イスに座りなおした。カケル君はベッドに胡坐をかいて壁にもたれている。
「ドライブでも行かない?気晴らしにさ。」
カケル君は言った。
あたしは警戒していた。カケル君の甘い誘惑にのったらいけないってもう一人の自分が言っている気がした。
傷ついて弱ってる自分はドライブに行きたかった。
「い」
迷っていた。
「い?」
「いかない。」
警戒しているもう一人の自分が勝った。
「なんだよ~。」
カケル君は残念そうだった。
「カケル君も明日仕事でしょ?早く寝なよ。」
あたしが言うと、拗ねたように口をとがらせて部屋から出て行った。
少しほっとして、窓際で伸びをしていると玄関から明かりがもれて、コウタと彼女の沢村亜也ちゃんらしき人物が出てきた。
コウタは送るらしい。
暗闇の中に消えていった。
なんだか幸せそう・・・・。
コウタはすっかり大人になって、あたしをからかうこともなくなった。
というかあたしに興味がない分意地悪なことも言わなくなっただけかも。
コウタってずるいな。その気にさせといて。
あたしはやっぱりカケル君よりもコウタが好きかもな・・・。
うまくいかないことばかり……。
ドライブに誘ってくれたのが別の人だったらな、
今ならついていきたい気分。