恋はとなりに
家にいてカケル君を見ると、なんとも言い様のない気持ちになった。
好きって言ってくれて、嬉しいはずなのに悲しいのだ。
複雑にいりくんだ気持ち。
コウタのお陰で心の蓋は取れたから少しずつ自分の気持ちと向き合えるようになっていた。
空を飛んでて着地点が見つからないような、不安が付きまとっていた。
カケル君はあの日からあたしの部屋には来なくなった。
あたしはカケル君をあまり見たくなかった。
両親が帰ってくるまであと1ヶ月。
頑張ろう。
と自分を励ましていた。
コウタと二人きりだった日が懐かしい。
なんか平和だった……。
1日で終わったけど。
次の土曜日。
あたしは自分の家に戻って掃除をしていた。
自分のベッドに横になると気持ちが安らいだ。
部屋の窓からカケル君を見つめてたこと、思い出していた。
大好きで 大好きで 大好きで 大好きで、
カケル君を一目見たくて帰りを待ってたな。
あんなに見たかったのに
今は見ると辛いなんて、気持ちは変わるもんなんだなー。
しみじみ感じた。
カケル君とこれからのこと考える気にはまだなれそうにないな。
でも、どうして?
また疑問が浮かぶ。
「あー頭の中ぐしゃぐしゃ。今は考えないようにしよ!」
一人の部屋で独り言を言った。
大きな声出すの久しぶりで、少し元気が出た気がした。
これは、いいかも。
ももちゃんにラインしようと見ると
河瀬君からラインが来てた。
“今度ノート写させて。”
と、打ってあった。その文字を見て励まされた。
河瀬君は前に進もうとしてる。あたしも頑張ろ。
鈴木宅に帰るとコウタと彼女がベンチに腰掛けお喋りしているところだった。
二人はあたしに気づいた。コウタは片手をあげて挨拶してきた。
彼女は立ち上がってペコリと、頭を下げた。
しっかりしてそうな子だなぁ…と思いながらあたしも会釈した。
まともに見たのは今日が初めてだった。
いつも彼女が来てるとき、あたしは部屋にこもっていた。
でも、なんだかイメージと違っていた。
おとなしめの清楚で可憐な子かと思ってたら、そうではなさそう。
どちらかというとボーイッシュな格好をしていた。
いつも制服だからわからなかったけど私服はあんな感じなんだ。
Tシャツとジーンズにスニーカーという姿だった。
アクセサリーもつけてない。
沢村亜也ちゃんと一緒に楽しそうに笑うコウタをチラ見しながら家に入った。