恋はとなりに
あたしは立ったまま机に手を置き、その手を意味もなく見つめながらコウタが何か言うのを待った。

いきなり現れたときは驚かされたけど、話し出したら案外冷静な自分がいた。

「さくらのこと、今でも好きだよ。」


思いもよらない言葉に目を見開いてコウタをみた。

「俺が幸せにするぞって思ってたけど、そうじゃないって気づいた。亜也に会ってその事教えてもらったんだ。遠くから見守るって感じの愛情みたいな。さくらは俺じゃダメなんだよ。」

コウタは後半照れ隠しに笑っていた。


コウタの話を否定したかった。

遠くから見守るなんて……


「近くにいてよ。コウタいないと、さみしい。」


机に手は置いたままコウタを見つめて言った。


あたしの言葉は意外だったらしく、動揺していた。


「さくらにはアニキがいるだろ?やっと想いが叶ったんだからもっと喜べよ。」

コウタはそう言って部屋から出て行った。


カケル君との思いでの品は何もなかったけど、
コウタと話したお陰でカケル君と向き合う覚悟ができた。



カケル君にその場で電話をかけた。



カケル君は、午後から友達と出掛けていた。カケル君が電話に出ると、周りが賑やかだった。

「どうしたの?」

カケル君は慌てて歩いているみたい。と、思ったら電話の向こうは静かになった。

「さくら、なんかあった?」

「今度、どこか遊びに行かない?どこ行くか考えといて。それだけ、邪魔してごめんね。」

言いたいことを言って一方的に切った。

電話したらカケル君と出掛けるのがすごく楽しみになった。

あたしは何を着ていこうかなー、とクローゼットをのぞいてみた。


パッとしない。

それもそうだ。パッとしてたことなんてない。

着たい服もわかんないし。

合コンに行くときはももちゃんに選んでもらって買った服を着ていってた、けど合コン用の服を着てカケル君と出掛けるのは違うかな~。





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