恋はとなりに


積もる話があるような無いような桃ちゃんとはすぐ電話を切った。

あたしは百日紅の下のベンチに座ってみたり部屋に入ってウロウロしていた。

カケル君はなかなか帰って来ない。



9時を過ぎた頃あたしはちょっと怒っていた。


カケル君が帰って来ないことに。

昼過ぎから出掛けててまだ帰ってこないなんて。

連絡もくれないし。


でも仕方ないこともわかってる


帰ってきてって言ったわけでもないし。


今日はあたしが勝手に待ってて、気を揉んでいるだけなのだ。



カケル君は、結局その日の0時を過ぎた頃に代行運転の車で帰ってきた。


カケル君は家に着くと、ペットボトルの水を飲みながら部屋に入りそのまま出てこなかった。

あたしはこっそり部屋を覗きに行ったらイビキかいて大の字で畳の上に寝ていた。




布団を掛けようとしていると、おばさんが入ってきた。


あたしがいたことに驚いていた。

「おにいちゃん、だらしないでしょう。こんなに酔っぱらって。」

おばさんは慣れた様子で、カケル君を布団に移動させた。

「いえ……。」

あたしは返答に困っていた。

「だから彼女ができてもすぐフラれちゃうんじゃないのかしら。」

あたしはますます返答に困った。


「はい。これで大丈夫。さくらちゃん心配で見にきてくれたんでしょう?ありがとう。もう大丈夫よ。」


おばさんは暗がりの中で素敵な笑顔を向けてくれた。


あたしは部屋に戻った。



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