恋はとなりに


「さくら!」

大きな声で呼ばれて振り向くと、自転車に乗ったコウタがいた。

「コウタ、何してるの?こんなところで。」


「探しにきたんだよ。電話しても出ないし。部屋に財布とかあったから。歩いてるかと思って。」


息を切らして探しにきてくれたコウタを見てたら、また苦しくなった。

「家に帰りたくなくて。コウタお金かして。」

涙を堪えながら言った。

「そんな持ってないよ。どこ行くの?」

「……お姉ちゃんちでも、行ってみようかな。」

「お姉ちゃんちって、遠いだろ?お財布持ってくるよ。1回家帰ろう。後ろ乗って。」


コウタはあたしが後ろに乗るの待っている。

お姉ちゃんちの鍵も家に帰ればあるから、とかいろいろ考えて。

渋々後ろに乗った。


なんかドラマで見たことある風景。

あたしとコウタが恋人同士だったらよかったんだけど。


20分程で家に着いた。

入るとおばさんが心配していた様子で迎えてくれた。

「朝ごはんもまだだったからお腹すいたでしょう。仕度してあるから食べな。」

あたしは言われるがままご飯をいただいた。

時刻を見ると10時になっていた。

食べたお皿を片付けていると、カケル君がキッチンにやってきた。


起きたばかりの様子。

「んあ、おはよう…。」


だるそうに挨拶をしてきた。

「今日出かける?昨日出掛けたいって言ってたろ?」



カケル君はコーヒーを飲みながら言ってきた。

思いもよらない言葉に動揺して、お皿を落として割ってしまった。





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