恋はとなりに
ある日大学にいくと清香ちゃんに男の子を紹介された。
清香ちゃんの彼氏かと思ってたら違うみたい。
「こちらはね、加藤俊雄くん。さくらと同じ経営学部だよ。友達いないんだって、仲良くしてあげて。じゃああたし次講義あるからまたね~。」
清香ちゃんはそれだけ言って嵐のように去って行った。
仲良くしてって言われても、困る。
チラッと加藤くんを見ると目が合ってしまった。
「あの、あたしも次あるので失礼します。」
と言って去ろうとしたら、
「次オフィス心理学でしょ?俺もとってるんだ。一緒に受けよう。」
なんて言って歩き出した。
え、何なにこの人。
一緒になんて受けたくないよ。
でも結局強引さにまけて隣に座ることになった。精一杯の抵抗として座席1つ分はあたしのカバンを置くことに成功しあけて座った。
考えてみたら、男友達なんていないし。いたことがない。カケル君やコウタ以外の人と話すことってほとんどない
佐藤君以来かも。
講義が終わると、加藤君はあたしの横を歩き、なんだかいろいろ話している。
加藤君の話が全然頭に入って来なくて横に壊れたラジオがあるみたいで不愉快だった。
「加藤君、あたしは講義を1人で聞きたいの。一緒にとかもうやめてください。」
あたしは立ち止まり壊れたラジオに向かって言い放った。
加藤君の口は止まり、一瞬静かになった。
「それにあたし仲良くするつもりないから。ついて来ないで。」
静かになってるうちに追い討ちをかけるがごとくトドメをさした。
加藤君はしょんぼりしてあたしのもとから去って行った。
あたしはホッとして次の場所に向かった。
清香ちゃんにメールした。
加藤君とは仲良くなれない旨を伝えた。
その夜、清香ちゃんに呼び出された。
清香ちゃんは彼氏の車で加藤君を乗せて3人で家まで来た。
一番近くのファミレスに行き。話し合い?が始まった。
「さくら、としくんにひどいこと言ったって聞いた。どういうことか説明して。」
「清香ちゃん、あたし友達なんていらないから。大学には勉強しに行ってるの。講義聞いてるのに話かけてくるような人と仲良くなれないから。」
「僕が悪いんだ。」
加藤君は泣きそうな情けない声で言った。
「他の人探して下さい。それじゃあたしもう帰るから。」
これ以上ここにいたくない。
「あ、そう。あたしらまだ残るから1人で帰んなよ。」
清香ちゃんは冷たい。彼氏が出来て変わってしまったみたい。
歩いて帰るなんて無理。家まで10キロはある。お母さんに電話した。
そしたら
「ヤダーもうお父さんとビール飲んじゃった。」
だって。
あ゛ーーーもうどうしよ。
カケル君が頭によぎった。ちょっとかけてみよう。
ドキドキしながら通話ボタンをタップする。
カケル君に電話することなんてめったにない。
「はい。もしもし?」
カッコいい声にどぎまぎする。
「あ、さくらだけど。仕事中?」
「いや、今帰るとこ。」
「あの、ファミレスまで迎えにきて欲しいんだけど、本当に一生のお願い!カケル君が来ないと、歩いて帰らなきゃいけなくなる。訳は後でお話します。」
「わーったよ。15分くらいで行くから待ってなさい。」
カケル君はいつものようにちょっと乱暴な口調で電話を切った。
来てくれることになったら、たちまち嬉しくなって、心臓がドキドキしだした。