恋はとなりに
なんの進展もないまま19才になり。
夏休みもお母さんの畑の手伝いしながら過ごした。
加藤君とは会わない。
コウタもあれから会ってない。
お母さんの畑はカケル君ちの裏側にある。カケル君ちから農地を借りている。
自分たちで食べるだけなので小さい畑。
カケル君ちをぐるっと回って家に帰ってくる、その途中
「さくら。」
急に呼ばれた。聞いたことのある声に振り向くと後ろにコウタが立っていた。
あたしはコウタを一瞥して無視して通り過ぎた。
「ちょっとちょっとちょっと。無視すんなよ。」
とあたしの腕を掴んだ。
「離して。」
「気にしてんだ。兄ちゃんの彼女のこと。」
コウタは意地悪そうに笑う。
「ごめんな。でもいい加減諦めたら?」
コウタは悪びれた様子もなさそうに言った。
「余計なお世話ほっといて。」
コウタに痛いところつかれて思わず大きな声になった。
そんなこと自分が一番よくわかっているつもり。
だけど心をコントロール出来ない。
大きな声になったことすぐ反省して、取り繕うように穏やかな口調で聞いた。
「コウタは彼女いないの?」
パッと頭に浮かんだ質問、何気なく聞いた。
「いるよ。モテてしょうがない。」
コウタは自慢気に言った。
あたしは指さして言い返した。
「ほら、そんなんだからあたしの気持ちがわかんないのよ。」
嬉しそうに言うあたしをコウタは憐れむように見た。
「俺だって好きな人を諦めたことくらいあるよ。」
コウタは悲しそうに言った。コウタのしんみりした顔、見たことなくてびっくりしてしまった。マズイこといっちゃったなぁとあわてて謝る。
「あ、そう。そうだよねゴメンね。」
「じゃああたしお風呂入るから。またね~。」
あたしはそそくさとその場を後にした。
汗まみれの泥まみれで早くシャワーを浴びたかった。
コウタの悲しげな顔が目に焼き付いて離れなかった。
まだ17だもんな。失恋の傷が癒えてないのかも。
でも彼女いるって言ってたな。彼女が可哀想。
忘れようとして新しい恋をしようとしてるのかな。
なんだかわからない。
世の中はわからないことだらけだ。