恋はとなりに
19歳の夏休み。
あたしは町から出ることもなく、家と畑を往復してただけ。
コウタにもよく会ったけど、あのしんみりした顔は見れない。あたしも本当は聞いてみたいけど、聞けないでいる。
カケル君のことは、遠くから見つめていた。
諦めるってなんだろう。あたしは諦めてない?
自分では諦めてるつもりだよ。
でもカケル君のこと見ていたい。
大好きなんだもん。
諦めたら見るのも止めないといけないのかな。
夜の7時、鈴木家にお邪魔した。
コウタを訪ねて。
「コウタに用なんて珍しいわね。部屋にいるわよ。」
と、おばさんに言われ、2階の部屋に向かった。カケル君はまだ帰ってない。
コウタの部屋をノックする。ぶっきらぼうな返事が返ってきてあたしはドアを開けた。
コウタは机に向かい勉強してるみたいだった。あたしにまだ気づいてない。あたしは部屋に入り
「コウタ。」と呼んだ。
コウタはあたしの声に反応してくるっと振り向いた。
「さくら。なんだ、どうした?兄ちゃんまだ帰ってないよ?」
「うん。コウタに聞きたいことがあって。」
あたしはベッドに座った。
コウタはあたしが来たことにまだ驚いているようだった。
確かにコウタの部屋に入ったの初めて。
「聞きたいことって何?」
コウタは机の椅子に座ったまま、くるりと後ろを向いた。
「諦めるってどういうことするのか聞きたくて。あたし諦めてるつもりなの。カケル君相手にしてくれないし。
でも好きなの。見ていたいし、いつも考えちゃう。
それは仕方ないなって思って。
コウタは何で諦めたの?」
「フラれたから。他に好きな人がいるって。」
「ふぅん。そうなんだ。」
「それでもう終わり。自分でおしまいにした。そしたらだんだん忘れてくる。遊び行ったり騒いだりして。」
あたしはコウタの話をメモした。
さわぐ
自分でおしまいにする
遊びに行く
それを見ていたコウタは吹き出した。
「ひーーっもうやめて~~~!何でメモなんか取るんだよ!そんなやつ見たことない。」
コウタはしばらく笑い続けた。
「書いとかないと忘れちゃうから。」
あたしがいうと、コウタはあたしのメモを奪って見てはまた笑い転げた。
あたしは取り戻そうと、コウタを押し倒してしまった。
あたしもよろめいて一緒に倒れた。コウタはあたしを受けとめようとして、腕の中で抱きしめた。で二人はベッドに倒れた。
その時ガチャっと音がして
「なんか楽しそうだな。」
と、言いながらカケル君がドアをあけた。