恋はとなりに


気づくと自分の部屋にいた。

お母さんが心配そうに除き混んでいる。

「さくら、さくら、大丈夫?お母さんがわかる?」


「うん。」

「畑で倒れてコウタ君が運んでくれたのよ。」

頭が働き出す。コウタ。
そうだ、コウタ。

コウタに好きって言われたんだっけ。

「お医者さんに診てもらったら、軽い貧血じゃないかって。もう、お母さん生きた心地がしなかったわ。畑は当分行かなくていいからね。」

お母さんは言うと、出て行った。

コウタがあたしを好きって言うから、ワケわかんなくなっちゃって意識を失ったんだ、きっと。

あたしは携帯を手に取り、コウタにメールした。

《もうあたしに近づかないで。》

と、打って送信した。

ドアをノックする音がしてお母さんが入ってきた。

「さくら、コウタ君よ。」

コウタが入ってきた。
あたしは(げっ)と心の中で思った。


「コウタ君スッゴク心配してくれてたのよ。命の恩人なんだからちゃんとお礼しなさいよ。コウタ君がいてくれなかったらどうなってたことか。考えただけでゾッとしちゃう。」

と言ってお母さんは出て行った。

コウタは携帯を見ている。

「近づかないで?命の恩人なんだから敬え。」

コウタは寝ているあたしに顔がつくぐらい近づけてきた。
高圧的な態度、ムカつく。

「もうそういうの本当にやめて。」

あたしはタオルケットをかぶって隠れた。

「コウタが現れなかったら倒れることもなかったんだからね。」

隠れながら言った。

コウタが言い返してくるのを待って身構えていたが、静かなままであたしはタオルケットから顔を半分出してコウタを見た。

「また来るよ。じゃあな。」

コウタは部屋を出て行った。

言い返してこないなんて気持ち悪い。
あたしどうしたらいいんだろう。どうすることも出来ない。

コウタと付き合ったら。

カケル君を忘れられるかな?今は考えられないなあ。


あたしがカケル君を好きなように、コウタはあたしを好きなのかな。

どうしてカケル君じゃないの?カケル君だけでいいのに。




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